岡山県の西北端に位置し、広島県と鳥取県に接する町、新見市神郷町(しんごう)。
町域の92%を山林が占め、高梁川に注ぐ西川が流れる自然豊かな町。
日本一の大きさを誇る「親子孫水車」や「水のゲート」があるなど、水が豊かな町であることを感じさせる。

「将来は水の綺麗な里山で、のんびり田舎暮らしがしたい!」
そんな夢がぴったり当てはまるようなのどかな場所である。
しかし、田舎暮らしに一歩踏み出せないのは、「仕事がない」(探せば結構あるのだが)というイメージが強いことも原因の1つ。

今回は福岡県から神郷町に移住し、地域で仕事を生み出そうとアマゴの養殖に取り組む松田礼平くん(27)に話を伺った。

福岡県から移住し、アマゴの養殖に取り組む。

福岡県から岡山県新見市に移住。神郷町で地域おこし協力隊の活動をしなから、アマゴの養殖に取り組む。

松田くんは2014年4月に新見市の地域おこし協力隊として着任。

地域おこし協力隊とは
「地域おこし協力隊」は、人口減少や高齢化等の進行が著しい地方において、地域外の人材を誘致し、その定住・定着を図ることで、地域力の維持・強化を図っていくことを目的とした制度。具体的には、都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住民票を移動し、地方自治体が「地域おこし協力隊員」として委嘱して、一定期間以上、農林漁業の応援、住民の生活支援などの地域協力活動に従事してもらいながら、その地域への定住・定着を図る意欲的・積極的な取組みに、総務省として必要な支援を行っている。

と総務省のホームページに小難しく書かれていますが、簡単に言えば
「3年間、国がお金を出してサポートするので田舎を活性化しながら自分を売り込んで、地域に住み続けられるように頑張ってね」というような感じ。

■なぜ新見市を移住先に決めたのか?

THE田舎の風景。とても気持ちがいい。

THE田舎の風景。とても気持ちがいい。

「新見市は通信環境が整っていたり、選挙の電子投票システムを導入したり、新しいことを積極的に取り入れている姿勢が見えたので、協力隊制度にもきっと理解がある地域なんだろうなと感じたので。」
でもやっぱり一番は、実際に足を運んでみていい場所だな~って実感したことが大きかった。
実際に移住をしてみても、不便と思ったことはあまりなく車があれば何とかなるといった感じで過ごしている。地域も若者ということで色々と応援や面倒を見てくれて、壁を感じることもないとのこと。

持ち前の行動力と明るさで、すっかり地域に溶け込んでいる様子の松田くん。話をしている最中も近所の人がアマゴのお返しにとキャベツを持ってきてくれるなど、関係の良さが伺える。

そんな松田くんは、活動の中で出会ったアマゴの養殖池の跡地を復活させ、アマゴの養殖で起業した全国の協力隊の中でも数少ない取り組みをしているパワフルな一面も持つ。
※地域おこし協力隊は地域によって、副業が認められており、国も将来の定住に向けた起業を応援している。

■なぜアマゴの養殖を始めた?もともと魚が好きだったから?

赤い斑点が特徴の渓流魚アマゴ。似ている魚、ヤマメは斑点がない。

赤い斑点が特徴の渓流魚アマゴ。似ている魚、ヤマメは斑点がない。

この辺りは水がすごく豊かな地域で、アマゴの養殖も盛んに行われており、昔は5件もの養殖業者がいたのですが、後継者不足などにより全て廃業してしまったんです。
でも地域の人にとってアマゴは生活の中で重要な魚で、お祭や来客時には欠かせない存在なんです。今は他の地域から仕入れてきたアマゴを地元の祭りで焼いたり・・・。

なので、この地域で養殖を復活させることが一番の地域おこしなのかなと思って、気がついたら自然の流れで初めていました(笑)

そんな軽い気持ちで起業を・・・と思ったが、しっかり分析もしているようで、養殖を始めた4つのポイントを教えてくれた。

■あまご養殖を始めた4つのポイント

アマゴの養殖池。2014年春に訪れた時は、池の修復作業をおこなっていた。

アマゴの養殖池。2014年春に訪れた時は、池の修復作業をおこなっていた。

①地域産業の歴史があった →使用されていない養魚池を再利用することで設備投資が抑えられる。
②養殖場がある立地と歴史 →養殖場の上には畑や民家はなく、とてつもなく水が綺麗。
③アマゴという魚の魅力  →川魚の臭みが無く美味。水がきれいな所で育てることで差別化が出来る。
④地域の方の思い     →再開されたことをすごく喜んでくれて、色々協力・応援してくれる。

確かに、こんなに水の綺麗な所で育ったアマゴが美味しくないワケがない!そして、移住してきた若者が頑張って育てているなんて、地域の人が応援しないワケがない。これが最大の強み。

自身も水産高校・大学でも養殖を学んでいたので、養殖の大変さ(病気や餌代、生体の管理など)は学んでいたが、松田くんからは感じられない。むしろ、養殖を楽しんでいる感じがする。
だけど目に見えない苦労もあるんだろうな・・・きっと。

■養殖を初めて大変だったことは?

魚と池の健康チェックには気を使う。あと花粉にも・・・

魚と池の健康チェックには気を使う。花粉症がしんどそうだ・・・。

池に稚魚を放してから(8月~12月)は身動きが取れなくなるので、地域おこしの活動とのバランスが難しい。
一番気を使うのは水で、雨が多いとニゴリやゴミ、晴れが続くと渇水や酸欠が起こるので天気は特に注意している。最近は異常気象などで天気が読みにくいので大変なんだとか。

何かあっても、近くに先生がいないので分からないことは遠くまで聞きに行かないといけない。だけど、気楽にできるのでその方が自分にあっているので続けられるとのこと。

ここから養魚池に水を引いている。高梁川の源流。

ここから養魚池に水を引いている。高梁川の源流。

ここから上流は畑も、民家もないため、透き通った水はアマゴの養殖には最適。しかし、冬の生活は寒さが厳しく雪も頻繁に積もる。決して楽ではない田舎の生活を楽しみを見つけながら過ごしている。
20代・30代の人がもっと移住して着やすいように、移住相談や地域の案内などのサポートも考えているとのこと。

■今後の目標は

手塩にかけて育てたアマゴは新見のイベントなどで塩焼きにして販売している。

手塩にかけて育てたアマゴは新見のイベントなどで塩焼きにして販売している。

アマゴは田舎の風景を感じられる食材なので、まず、色々な場所で新郷のアマゴのことを知ってもらい、そこから神郷に来てもらえるようにしたい。
田んぼを見ながら食べるお米が美味しいように、里山の風景を見ながら食べるアマゴが一番美味しいので、養殖場の近くに地域と外の人がアマゴを通して交流できる場を作りたい。

そんな場所が出来たら、毎晩入り浸ってしまいそうだ。それくらい心地の良い場所で、時間がたつのを忘れてしまう。

とろけるようなアマゴの刺身は、現地に足を運んでこそ味わえる究極の一品。

とろけるようなアマゴの刺し身は、現地に足を運んでこそ味わえる究極の一品。

これからも、神郷アマゴの復活に向けて頑張る松田くん。イベントで見かけたら、是非味わってみてください。

哲多ふるさとすずらん祭りに出店予定

新見市地域おこし協力隊