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ベンガラの街、吹屋で陶芸体験 ~陶芸家 田辺典子さん~

高梁市成羽町の吹屋。
かつて、銅鋼やベンガラ製造で栄えた町であり、
ベンガラが塗り込まれた赤い家が立ち並ぶ街並みは、一度訪れたら忘れられないような美しい場所です。

そんなベンガラをつかった「ベンガラ焼」が吹屋で体験できる!ということで、
今回は、吹屋ふるさと村ベンガラ陶芸館の陶芸家、田辺 典子(たなべ のりこ)さんにお話を伺いました。

そもそも、「ベンガラ」って、どういったものなんでしょうか?

「大昔、正倉院の宝物殿に入っている宝物にもベンガラが使われていました。
古代文明があったところでは、王様を祀るときに描かれる壁画、その中に必ずベンガラが使われています。
それくらい、ベンガラは古くから使われている天然の顔料です。
そして、吹屋のベンガラ。これは、人間の力で製造したベンガラで、硫化鉄鉱石の中から「ろうは」という、
ベンガラの元になるものを石の中から出して、それをもう一度焼いたものがベンガラになるんです。
このベンガラの精製方法を、発見した人がすごい!しかし、誰が発見したのかはわかっていないんです。」

そう、当時では誰も思いつかない様な画期的な方法で精製されたという「吹屋ベンガラ」。
なめたり食べることもできる!と言われたくらいの高品質だったそう。
誰が精製方法を伝えたかは、諸説あるそうですが(これもかなり興味がありますが 笑)、ベンガラは「赤い顔料」としてだけではなく、
建物の柱や壁に塗り込み磨くことで、腐食しにくくなり、防カビ効果もあり、強度を保つためにも使われていたそうです。

晴れた日の吹屋の街並み。空の青と壁の赤のコントラストがたまらなく美しい。

しかし、銅鋼やベンガラで栄えていた吹屋も、時代の流れとともに銅山が閉山。
かつての美しい町並みも廃れかけそうな中、重要伝統的建物群保存地区として選定され、街並みを残そうと保存会ができます。
そして、観光地としての吹屋の体験型施設として、平成2年「吹屋ふるさと村ベンガラ陶芸館」が開館。
吹屋の特産品として、「吹屋ベンガラ」を使った焼き物「ベンガラ焼」が誕生します。

陶芸体験では、手びねりや電動ろくろを使った陶芸を丁寧に教わることができる。

「私が陶芸館で陶芸教室を始めたころは、吹屋の人が3~4人毎週来てた。
観光バスもバンバン来てたから、陶芸館に作品を作って置いとけば、それが売れていった。
けれども、日本の経済が変わり若い世代は、吟味して自分のご褒美になるものにしかお金を出せなくなった。
そうなると、こういう産業は難しい。ただ建物の中を見せてお金をもらうというやり方は、今はもう通用しない。
でも、その切り替えが、吹屋は遅かった・・・。」

この10~15年で人口が約1/3にまで減ってきているという吹屋の現状。
時代の波に乗れずにこの現状を迎えている反面、
だからこそ、主要な観光地のようなお土産物屋さんが立ち並ぶ、煩雑な街並みにならずにすんだ・・・という面もあります。

赤いベンガラの釉薬をかけてできる「ベンガラ焼」

「吹屋には、30~40代の、これから子育てをする可能性がある世代の女性にたくさん来てもらいたい。
ああ、こういうところに来るとなんか精神的に安定するんだよな~って、ホッとするな~って。
この街並みをみて、「古い、汚い」って思うんじゃなくって、
「美しい街だな」って思える感性を、次の世代の子供たちにも育ててほしいなっておもう。」

田辺さんは、おじいちゃんの代から続く陶芸家の家系。
陶芸を通じて、時代や街の移り変わりを感じてこられたんだと思います。
そして、陶芸家として活躍されてきた陶芸館も、娘の明架里(あかり)さんへと引き継がれていきます。

田辺典子さん(右)と、娘の明架里さん(左)

吹屋ベンガラの赤い色。
その深い色の中には、吹屋を守り引き継ごうとする人たちの思いがたくさん詰まっている気がします。
ベンガラを守り、ベンガラに守られ、そこに暮らす人たちの生活がいまだ息づいている、この街。
そんな街並みの美しさに癒されながら、歴史を感じながら、
ぜひ、ご自分の手で、この世に一つのベンガラ焼作品を作り出してみませんか?

【吹屋ふるさと村ベンガラ陶芸館】
教室日:毎週火曜日、日曜日 10:00~18:00(3~12月)
*冬季(1月~2月)は、2名様から要相談(要予約)

料金:体験コース
・手びねり 粘土1kg・・・¥2,000
(焼成、釉薬、指導料込。箱代、送料別)
・絵付け
茶碗・湯呑・・・¥1,000
マグカップ・・・¥1,400
大皿・・・¥2,500
*2018年4月以降、料金変更の予定です。

岡山県高梁市成羽町吹屋86番地
電話:090-5694-8746(田辺)

取材記事 西原千織