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高梁市の未知の工芸品のコトコト馬についての不思議な信仰

国内にはいろいろな伝統工芸があるが、高梁市でも職人、あるいは地元有志が伝統を残すために活動している。竹ぼうき、わら細工、いろいろあるが、今回はそのわら細工の一種の「コトコト馬」を取材してきた。

「コトコト馬」とは、上記の通りわら細工の一つで、馬を模して作られている。今では製作している人はほとんどいないという噂も聞いたが、有漢町の男性が作り方を受け継いでいると知って話を伺った。

 

 

これがコトコト馬

これがコトコト馬

 

男性曰く、「昔はどの家でも作っていたが今ではほとんど見なくなった。私は見よう見まねで作り方を覚えた」とのこと。
どの家でも作っていた、というが何のために? と聞くと、結婚の式、正月の祝いなどで用いていたらしい。

 

材料のわら。これをよって作る。

材料のわら。これをよって作る。

 

しかしその使い方というのが、例えば結婚式なら、「近所の者たちが結婚式を挙げている家にコトコト馬を持って行き、戸を叩いてから(この時たてる音がコトコト馬の語源らしい)祝儀を持って帰る」というもの。この時、祝儀は家人にばれないように、つまり家人に挨拶もなしに持って帰るのが習わしで、反対にもし見つかれば捕まってしまうのだという。
もちろん儀礼の中の話なので、家人も近所の人が祝儀を持って帰るのも承知のうえだし、全て織り込み済みなのだが、しかしこれはずいぶん変わった儀礼に思われる。

 

ひとつひとつ大きさや細部が異なる。

ひとつひとつ大きさや細部が異なる。

 

「外界からの訪問者が家に富をもたらしてくれる」というマレビト信仰に源流があるのではないかと思うが、コトコト馬の場合、富を分けてもらえるのは家の方ではなく、馬を持ってきた訪問者の方である。あるいは、富(この場合は祝儀)への対価としての馬なのだろうか。それとも、マレビト信仰はまったく関係なくて、地の神に供物を捧げていた信仰の名残が変化したものなのか。

伝統工芸は作る、見るのも楽しいけれど、それが持っている背景を知ることも楽しい。