松原町が地域づくり推進賞を受賞!

松原地域市民センターは、備中高梁駅から自動車で十五分ほどの位置にある。山深い集落のイメージとは裏腹に、市街地とは割合近く、利便性は高いように思われる。
今回、同センターを訪れたのは、松原町で活動している「松原地域まちづくり推進委員会」が備中県民局にて「地域づくり推進賞」を受賞した、との情報を得たからだった。

松原町はみごとな雲海が楽しめる町でもある

地域づくり推進賞は、各地域の優れたまちづくりの取組を行っている団体を表彰する賞だ。松原町は筆者の暮らす町の隣町でもある。どのような取組を行っているのか、気になった。

話を伺ったのは松原地域市民センターの東館長。
「松原町は小さな町。派手なことをやっている訳じゃないが、地道な取組を継続したことを評価してもらえたんだと思う」
と、東館長は謙虚に語った。
松原町が同賞を受賞したのは、移住定住促進、地域内外の交流促進など、住民主体のまちづくりが評価されたからである。確かに、派手さはないかもしれない。しかし、住民の希望を取り入れながら続けた取組は確実に結果を生み出しつつある。

松原町の取組でいまもっとも注目されているのは、「やまびこカフェ」だろう。
地元住民の交流、高齢者の認知症予防を目的に行われている取組だが、こちらもまずは、その会場となっている「やまびこ市場」の説明からはじめたい。

「やまびこ市場」は地元有志で運営されている直売所で、冬期(1月~4月)を除く日曜日に定期的に開かれている。毎年の市場開きと市場納めの際などに販売される蕎麦(割出蕎麦)は大変好評で、この蕎麦を食べるためにわざわざ訪れるお客さんもいるそうである。

やまびこ市場の名物そば

また、他にも特長を挙げるとすればその眺望だろう。
新年には初日の出を拝む会が行われるやまびこ市場からの眺めの良さは折り紙付きだ。

市場横から。絶景である

向かいには展望台もある。下に見えるのが市場

このやまびこ市場を活用して、毎週木曜日に行われているのが「やまびこカフェ」だ。やまびこ市場を運営する有志の女性陣が声をかけあって企画した。

地域のみんなにおしゃべりを楽しんでもらおうとの思いでやまびこカフェは立ち上げられた。そうすることで、地元の交流作りにつながり、更に会話をすることで認知症の予防効果も期待できる。
筆者も実は、何度かお邪魔したことがあるが、そのたびに大盛況で眺めの良い席はほぼ満席だ。カフェではコーヒー、菓子などが食べられるが、毎月最後の木曜日には特製カレーも食べられる。味は日本の家庭で親しまれている一般的なカレーのそれだが、複数のルウを調合しており、深いうま味が楽しめる。何を隠そう、筆者もこのカレーのファンの一人で、都合が着く月には毎回足繁く通っている。

地元住民向けの取組ばかりではない。地域の人口減少、高齢化率上昇を受け、移住・定住促進にも力を入れている。
その代表的な例が空き家の利活用だ。
空き家の利活用といっても簡単ではない。空き家があってもそもそも住める状態とは限らないし、仮に住める状態だとしても、家主が様々な理由で移住者に貸すのを渋る場合もある。
松原町のまちづくり推進委員で構成されている地域振興部では、地域の空き家状況を調査。市外・県外の持ち主へ手紙を送り空き家の提供を呼びかけた。地道な活動が功を奏し、家主の理解が得られ、賃貸可能な空き家の数は増えた。移住者も増えてきている。

上述のやまびこ市場では、毎週木曜日のカフェの他にも、地域おこし協力隊の企画による一晩限りの居酒屋も開催された。今後も新たな企画、交流の場が作られていくかもしれない。
人口減少、過疎化が叫ばれている地方集落。その中において、松原町の地域住民を主体とした自治的な交流拠点作り、地域を維持するための移住・定住対策は一つのモデルケースとなり得るのではないだろうか。
「今回の賞の受賞は、地道な活動を粘り強くがんばったことへのご褒美だと考えています。町民皆さんの活動に感謝しています。これからも取組は継続していきたい」
とは東館長の弁。
松原町の取組はこれからも続く。今後も同町の動向には注目していきたい。

記事 長谷川竜人