大阪からトマト農家に!! 西田さん一家

備中高梁駅から車で約40分。
国道を抜け、山のくねくね道を登り切ると、
一気に空気が変わるように、土地が開ける場所があります。
高梁市川上町の神野(ほや)地区。

高梁市には、「田舎で農業をしたい!」という方に向けて、新規就農者への支援制度があります。
この制度をつかって、トマト栽培が盛んなこの土地に、大阪から移住された西田さん一家。

2017年1月に、西田和正さん・和美さん夫婦、
6月に、お母様のはる江さんと妹の智恵子さんが移住。
現在は、家族4人で古民家に住み、トマト農家を目指されています。

そんな西田さん一家に、お話をお伺いしました。

〇高梁に移住して、農業をやりたいと思ったきっかけは?

和美さん:もともと趣味で、和歌山で畑を借りて、4~5年農業をやっていました。
やっているうちに、将来やりたいな~っていう気持ちがどんどん出てきて。
でも、定年後って考えたら体力的にしんどいな~と思っていました。

和正さん:僕も、自然のある所に移りたいっていう夢はありました。
最初は大阪から近い所を探そうと思い、岡山っていうのは全くなかったです。
でも、大阪の「ふるさと回帰支援センター」でお会いしたのが、岡山担当の人で、
「岡山はいいところだから、ぜひ一度行ってください」と。
そこで、岡山に行って役所を回り、最後に辿り着いたのが、高梁。
移住コンシェルジュの佐藤君がとてもいい人でね。
まずは、家を見てみようということになりました。

〇家はどうやって探されましたか?

和正さん:高梁市のホームページの「空き家バンク」で探しました。
今住んでいる家も出ていて、でも、ハードルの高いことが書いてあったんですよ。
「農業をしていただける方、限定」みたいな。
でも、一か八か行って見せてもらおうか、ということになって。
行ってみたら、大家さんも村の人たちもいい人が多くて、2回来て、2回目に決めました。

〇はる江さんと智恵子さんは、どうして高梁に行こうと思われたのですか?

智恵子さん:私は、こういっちゃなんですけど、農業には全く興味はなくて。
大阪では、宝飾の仕事をしていました。ただ、仕事の人間関係とかずっと嫌で、辞めたいな~って。
こっちに様子を見に来た時に村の人たちと話をしていて、「まあ、仕事はなんとかなるよ」と言われて。
あと、母の面倒も私一人ではみられないので、ここを頼ってきた・・・というのもあります。

はる江さん:お世話になってますのよ。

西田さん宅からの風景。山の奥には、雲海が見えることもある。

〇トマト農家を目指されていますが、就農制度を使われていますよね?

はい。最初は、一年間、師匠のところでアルバイトさせてもらいました。
そして今2年目で、この秋にはハウスを建て始めます。
高梁は、就農制度が55歳までなんです。
僕は、53歳でこっちに来ているから、ぎりぎりでした。
ただ、45歳までだったら年間150万もらえる制度もありますが、僕らの場合はないから、
初めから稼いでいかないといけない。
どうなるかわからないけど、二反半くらいいきなりするよ。

〇それは大変ですね。

和正さん:師匠のところで鍛えられたからね(笑)。
あそこは5反4畝やっていて、それを手伝っていたから。
まずは、自分たちがトマトで生活していけるようにする。
それが落ち着いたら、人を呼んだりしたいと思っているよ。

〇移住希望者を・・・ですか?

和美さん:はい。大阪の若い子なんかをみていると、住むには便利だし、友達もいるし楽しそうだけど、
実際は生活にいっぱいいっぱいなんですよ。食べていくのにいっぱいいっぱい。何のために生きているのか?って。
でもこっちに来たら、「こういう生き方もある」、
「もっと、ゆっくりした生活をしようと思ったらできるんだ」って、思うんじゃないかな。

和正さん:それに、もう、あと10年経ったら、田舎はぐわっと変わる。
あと、5年でも「もう農業できない」っていう人が増えて、耕作放棄地がもっと増えていく。
そういうことを本気で考えて、今のうちに、人を呼んで育てないと。
移住者が多い地域は、先に移住して、一生懸命やって、村の人たちからも認められた人達が、
具体的な事を教えてあげていると思う。ただ、「いいところだから来てください」じゃあ、人は来ないよ。
僕らみたいなのが「なんとかなるよ」「僕らもこうしてきたから」って、
そういう感覚で言ってくれる人がいたら、やっぱり人は来るよ。
お金の面もしっかりわからないと、若い子なんかは特に不安だろうし、子供がいたらなおのことだよね。

村の中心にある石碑。

〇農業をやるとなると地元の方との関わり合いが大きいと思いますが、
地元の人たちと付き合う上で、どのようなことを心掛けていらっしゃいますか?

和正さん:基本的には、僕らはお邪魔している方だからね。その気持ちが一番大事。
地域の人たちは、私たちのことを、良くも悪くも本当に良く見ている。
自分のことだけじゃなく、村のことも一生懸命やる。
草刈りでも、自分のところだけでなくって、近くもついでにやってあげたらいいんですよ。
田舎に遊びに来るのと、生活していくのは、全然違うから、
地元の人たちに助けてもらわないと、やっていかれない。
本当に、こういう田舎で農業したいとか田舎の地域に入ってとか思ったら、
まずはその覚悟だね。

和美さん:気にしてくれる人に対しては、こっちも気にすること。自分から行くこと。
生活に慣れてきたら、いきなりお家に行っても喜んでくれるから。
嫌がる人もいるだろうけど、構いに来てくれる人はこっちから行くと喜んでくれる。
してもらったら、出来ることを返す。気を使いすぎるのもいけないけど、自分のできることをね。

神野は「畑かん」が整備されており、農業しやすい環境が整っている。

〇田舎に住みたい、移住したいと思ってもなかなかできない人もいると思いますが、
その決断が、出来る人と出来ない人の差って何だと思いますか?

和正さん:決断できない人に比べたら、欲があるんでしょうね(笑)。
欲=夢があるんでしょう。こうしたい、こういう暮らし、生き方がしたいっていう。
大阪に暮らしていたら、普通に給料もある程度もらえるし、別に苦労もしないけど、
なんで今あえて苦労してって。でも、また一から始めることが、しんどい事ではなくて、
こうやりたい、こういうところに行きたいっていう事じゃないかな。

和美さん:結局は、自分が何をしたいか。やるかやらないかを、まずは決める。
それがないと、どっちつかずで、田舎に来てもなにをやっているかわからなくなると思います。

〇これから移住や田舎暮らしをしたい人に向けて、メッセージを!

和美さん:とにかく、実際行ってみること。
本やネットを見ているだけでなく、動かないとわからないから。
移住している人のところに連れて行ってもらって、話を聞くこと。
自分で見て、動かないといけないよね。まずは、行動。

和正さん:動いていったら、繋がっていくから。
ああ、ここだ!というのは、絶対出てくる。人のつながりですよね。

〇移住されてよかったですか?皆さん、どうですか?

和正さん:それはもう!こっちに来たら、感じることが全然違う。
花にしても虫にしても、色んな事が。ただ歩いてても、毎日が面白い。
時間が足りないくらいだもんね。

はる江さん:何が楽しいって、山に山菜を取りに行くの。
はじめはワラビ、次はフキ。ゼンマイ。それに、みんな、早寝早起きで元気になりました。
食べ物が美味しくて、体重も増えました。

和正さん:今日はタケノコもらったり、なんでもない花がきれいだったり。
夏になれば蛍も飛ぶし、夜は庭にベットを出して、寝転んでみんなで星をみたり・・・。
ちょっとしたことを感じながら、充実した日々です。

西田さん一家。左から、和美さん、はる江さん、和正さん、智恵子さん。

都会から田舎へ・・・。移住して暮らすと、生活が変わるだけでなく、
感じること思うことはたくさんあります。
都会に暮らしていたら、分からなかった田舎の現実、過疎化、古くからの風習、人付き合い・・・。
良いことばかりでなく、移住者ということで苦労することもあるけど、
家族と共に、この地に根付き、これからの地域を支えていこうと頑張る西田さん。
地域に偏ることなく、移住者という立場に偏ることなく、
双方の意見を尊重しつつ、これからの未来をみんなで作り上げようとしている。
こういうしなやかで逞しい感覚を持った人が地域いるというのは、同じ移住者として心強いです。
これから、もっともっと高梁が面白くなっていくのではじゃないかと、わくわくしました。