松原の荒廃茶園(実際には再生作業が進められていてもはや荒廃してはいない感じであるが本稿では便宜上こう呼ぶ)でお茶っ葉の手摘み及び加工体験会が催されると聞いて行ってきた。
市外からボーイスカウト、ガールスカウトの子どもたちが多数参加するという。
子どもが紅茶。なかなかハイカラなものである。筆者が子どもの頃はほんとはコーラが飲みたいのだけれど飲むと骨が溶けると保育園児の頃に友人から聞いていたから律儀に麦茶か何かをぐずぐず啜っていた。その後コーラは小学校三年だか四年だかの頃に満を持して飲んだ。
子どもたちは十時頃に到着予定らしかったが筆者は準備のため九時頃に現場入りした。
当日は日射病及び熱射病上等、みたいな感じで太陽がかんかん照りつけ、気温もちょっと凶悪な暑さであった。日よけ用のテントや休憩時のお茶等を準備し時間も余ったので茶園の草刈り(正確には素手で引っこ抜くだけの草抜き)をしようとしたがとにかく暑くて僅かに働き即座に倒れ伏した。
そうこうしている内に子どもたちがやってくる。一番小さい子は弱冠五歳である。なかなか大したものだ。筆者が五歳の頃は何をしていたか。あまり思い出せないがケムラー(ウルトラ怪獣)の物真似をしていたことはうっすら記憶している。子どもたちは二日前から高梁自然公園でキャンプをしていて、日程の最後の目玉がこの茶摘みらしい。
今回の体験会の主催者であり荒廃茶園再生の立役者・藤田さんから挨拶、日射病及び熱射病への対策などいろいろの注意があった後いよいよ茶摘みの開始である。
子どもたちは待ちきれない様子であった。というより実際に待っておらず藤田さんの後に着いてゆくように指示されているのに数人が我勝ちに飛び込んで行く。まるでプール感覚である。だがここは陸だ。というかプールでも飛び込みはしてはいけない。
もう一番茶は摘み終わっているので、今回摘むのは二番茶である(茶葉は摘む時期によって一番茶、二番茶、三番茶と呼称が変化してゆき、これらは性質上も異なっている)。
子どもたちはみんな夢中になって茶を摘んでいる。五歳児の子はどうかと見てみるとこちらも順調に作業を進めていた。収穫した茶葉は各々配布されたビニール袋に集めている。声をかけると数枚の茶葉が袋に入っているのを見せてくれた。ちんまりしていた。
「いっぱいとれた」
彼女が言うのでいっぱいとれたことを褒め称え、でもどうせなら袋が一杯になるくらい収穫してみたらどうだと提案してみた。それは彼女にとっても魅力的な提案であったらしい。再び作業に没頭し出した。
子どもたちは全員非常に楽しんでいる様子である。こうなると気になるのは収穫した茶葉の味で、高梁紅茶というのはまろやかで渋みがないのがその味わい上の特徴であると筆者は考えているがその辺りが彼ら各々の加工でどのように再現されるのか。
今日はこの茶葉で釜煎り茶を作る予定である。どんな味になるのだろうか。
筆者としてもお手伝いとして幾らか汗をかいたところでぜひ味わってみたかったのだが呪わしいことにこれから別の予定があるのである。
仕方なしに五歳児にカバンの中から出てきたハッケン君ストラップをあげて茶園を後にした。
しかし気になるのは釜煎り茶。加工体験。
また次の機会にはぜひ全ての工程に参加したい。そう望むのはお手伝いなのにおこがましいであろうか。否否否。千遍否。
筆者は再度、茶園に足を運ぶのである。読者諸氏も如何でありましょうか。