筆者はミステリー小説が好きでよく読むのだけれど、その宣伝文句に「絶対に騙される!!」とか「大どんでん返し!!」とか書かれていると、それだけで何となくトリックが分かってしまう時がある。
いま読んでいる小説の帯にもそんなことが書いてある。
宣伝といえば、映画とかのコマーシャルで「真実は君自身の目で確かめろ!!」とか言われることがあるが、これもそこまで言うなら試みに確かめてみるかと思うけれど、なかなか時間がなかったりそもそもあまり乗り気でなかったりして結局確かめることができず、どうにもむずがゆいような気分になる。確かめることをおすすめしてくれた人の好意を無下にしたようで恐縮する。
そんなしょうもないことを考えていると、しょうもないこととて考えるのにはエネルギイが必要と見えて腹が減る。冷蔵庫には赤ワインが一本入っているきりである。筆者は家を出た。
それで行き着いたのが成羽町 吹屋のオーガニック食堂・金子や。
吹屋の入口から坂を上がってすぐ、映画のセットみたいな釜戸が見えたらそこが金子やである。
店内には格好の良いサイドカー(筆者はキカイダーも好き)やら、年代物の玩具やら、とにかくすてき道具がいっぱいで、それらをいちいちあげていたらここには書き切れないほど。
うっかり目的を忘れそうになる。筆者は食事をしに来たのだ。
なに食べよっかな。ちょっと悩んでvegeベジ丼にする。名前もかわいいしね。
帯に「大どんでん返し!!騙される快感!!」とかそんなことが書いてある小説を読みながら待っていると暫くして運ばれてきた。
どんぶりいっぱいに色鮮やかな野菜が盛られている。筆者は野菜が好き、というか嫌いな食べ物なんてほとんどないのだけれど、しかしこれはすごい野菜である。大丈夫かな。筆者、野菜をおかずにご飯食べられない人なんだよね。少し心配しながら口に運ぶと。
すごい美味しくてびびってしまった。
適度に熱が通った野菜は柔らかくて、もちろん野菜の味もするのだけれど、また同時にとても香ばしくてこれがご飯に合う。とても合う。全体にかけられた醤油ベースのタレが野菜とご飯をがっちりつかんで離さない。更に全体にちりばめられている高野豆腐のそぼろ、こいつによく味が染みていてご飯がどんどこ進む進む。
金子やを経営している田川夫妻(高梁には大阪から移住されてきている)に聞いてみると、お店で使う野菜は契約農家から直接仕入れているのだという。とはいっても野菜は旬のもの。契約農家の野菜だけでは足りない場合もあるのだけれど、そういう時も田川家で自家栽培したものや、高梁市内で生産された野菜を使用し、地産地消を追求しているそうである。
なお、野菜は全て無添加。美味しいだけでなく、身体にも良い料理を提供したいのだ、と田川夫妻は語ってくれた(ちなみに調理担当の奥さんはなんと鍼灸師の資格を持っているらしい)。ほかにも、珈琲ならば注文されてから豆を挽くなど、美味しさの秘密はいろいろ。
こりゃ嬉しいね、筆者なんかの身体、ろくな使い道はないのだけれど、その心遣いが嬉しいね、痛み入るね、と気付けばあっという間に完食である。
美味しかった。
勘定を終えて帰る時に気が付いた。
肝心のvegeベジ丼の写真を撮り忘れていた。
痛恨のミスである。「料理の写真、メールで送りましょうか?」と言ってくれるご主人の優しさが心にずびずび突き刺さる。息子のそら君(かわいい)も心配してくれている気がする。
でも撮り忘れちまったものはくよくよしたって仕方が無い。自信を持っておすすめできるのも確かだし。
vegeベジ丼がどのようなどんぶりなのか、真実はぜひ金子やで、あなた自身の目で確かめてみてほしい。
【金子やさんのFacebookページ】
https://www.facebook.com/fukiyafurusatomura.kanekoya