ゴールデンウィーク、多くの観光客が高梁を訪れ、筆者も観光客の案内に汗を流した。そんな時に困ってしまうのが「高梁って何があるんですか?」という質問だ。
考える時間と心に余裕があれば、「そりゃもう〜春は山菜、夏はアユ、秋には松茸、冬はコタツでのんびりぐうたら・・・」とオチまでつけて回答できるのだが、この手の質問は急に来ることが多い。
「えっと〜いや〜、特に何にもないですよ・・・」と0.5秒で出たその場しのぎの回答に自己嫌悪に陥ってしまうこともしばしば。皆さんも「何があるの?」の質問に「何もない」と答えていませんか?
そんな皆さんに伝えたい。なんと高梁市は、アスパラガスを栽培しているのです。それがどうしたと言われたらそれまでだが、アスパラガスが取れますと言って、悪いイメージを持つ人はいないと思う。むしろ、おしゃれなイメージを持たれるのではないだろうか。
スーパーでよく見るアスパラガス。しかし、実際に作っているところを見たことがない。木になっているのか、はたまた土の中に生えているのか、全く想像がつかない。ワクワクしながら、生産者の渡辺さんの畑を覗いてみると・・・
なんと、地面からニョキニョキきのこの様にアスパラが出てきているではないか!!すげー!!しばらく、その場でポケ〜っと見とれている筆者の横で、チョキチョキと手際よく収穫しているお母さん。その手にはモノサシ付きのハサミが・・・。なんでも、このモノサシの長さが基準で、これに満たない奴は出荷しないのだとか。
そういえばテレビか何かで、採りたてのアスパラガスは生で食べられると聞いたことがある。早速、水々しそうなアスパラをガブリ!
「青くさかろ〜に、普通は茹でたり炒めたりするんで」後ろでお母さんの声がした。
うん とっても青臭かった。
高梁市成羽町でアスパラガスを生産する渡辺さん。
県外で飲食店を経営していたが、家の事情で高梁に戻り、現在2反5畝の面積でアスパラガスを栽培している。アスパラガス栽培のメリットは一度植えると15年ほど収穫でき、重量も軽いため収穫時の負担も少ない。また、ブドウに比べると初期投資も少なくて済むとのこと。飲食店関係者からも高梁産のアスパラガスは注目されている。
収穫時期は5月から始まり、うまくいけば10月までは収穫できる。収穫最盛期は、一日に3回収穫でき30〜40キロほどの収量がある。
実際に写真を撮りたいとお願いすると、朝5時においでと回答があった。この辺り、農業の厳しさだなと筆者は感じた。当日、しっかり寝坊して9時にいくと、「普通は9時くらいに収穫するんよ」と笑顔のお母さん。亭主の冗談なのか、お母さんの愛なのか、真相は闇の中だ。
移住の窓口をしていて、ピオーネやトマトに新規就農する移住者は多いが、アスパラガスを志して就農する人に会ったことがない。
渡辺さん、アスパラガスで新規就農やっていけますか?
「土地があればできる。あと、負けない気持ち(笑)。暖かい土地の方が早く育つから、時期を早めて出荷できれば高値での取引も狙える。そういったテクニックも必要。近場なら手伝いに行くし教えるよ!!」
アスパラガスを始めて6年目、紆余曲折あったがようやく軌道に乗り始めた。色々と苦労してきた渡辺さんの一言一言が心強い。
無事にアスパラガスの取材を終えて、お土産にもらったアスパラガスを食べながらこの記事を書いている。豚肉に負けないくらい濃厚な味のアスパラガス。
「高梁には何があるんですか?」そう聞かれたら、迷わず「アスパラガスです。」と答えることにしよう。そうすることで、この町が少しオシャレになる気がした。