高梁市には飲食店がないという声をよく聞く。そう言われると確かにそのような気もする。でも一方で地域の男性が消防団の集まり後に、あるいは市役所職員の人が慰労会の後に必ず立ち寄ると話す店もあるらしい。
で、どんな店なんですかと聞いてみるとみな一様に「アジア、アジア」と言う。アジアとはどういうことだ。中華、タイ料理、ベトナム料理等アジア各国の料理を提供する複合レストランなのか。断っておくが筆者はグリーンカレーをはじめとしてタイ料理を概ね愛している。さっそく店の所在を聞いて行ってみた。
店に着くと独特の匂いが。関東で親しんだ家系ラーメンの香りにも似た、食欲をそそる香りである。それにしてもタイ料理っぽくはない。どういうことかと観察すると提灯に「ラーメン」のれんには「味屋」の文字が。
えっ。味屋。アジアでなくて。聞き間違いだったの?
「アジア」とは大上段に構えた名前であると思っていたが納得である。すっきりした気持ちで店に入るとカウンター向こうの厨房にはおばちゃんが一人。味屋を切り盛りしているおばちゃんだ。
筆者ら二人はチャーシューメンとごはん、ワカメチャーシューメンを注文。しばらくして出てきた両ラーメンを食べるとおいしい。
奇をてらわない昔ながらのシンプルな味付けで、柔らかめの細麺にも安心感がある。二人ともあっという間にたいらげてしまった。
おばちゃんに話を聞いてみると創業は60年以上前だとか。昔ながらの味にもなっとく、というか筆者なんてせいぜい二十数年しか生きていないのだからよほど昔の味である。ラーメン大先輩である。なんと創業当時の価格はラーメン1杯40円くらいだったというのだから日本円も60年でずいぶん様変わりしたものである。
ちなみにおばちゃん、ついこの間、高梁市内のイベントのチラシにモデルとして出たとか出ていないとか。
「写真撮っていいですかって言われたから撮らせたらいつの間にかチラシになっていた」とのこと。
撮影時はチラシにされるとは知らなかったらしい。それって大丈夫なの。
なんでも昔はアイスキャンディーも売っていたとか。他にもぜんざいなどいろいろやっていたが、最終的に今のラーメンに落ち着いたらしい。そういう歴史がある店だから、高梁の人に愛されているのにも納得できる。
ちなみに現在では廃止されてしまったものの、学生向けにもやし・ねぎだけがトッピングされた安いラーメンも販売していたそう。昔から高梁市民のお腹を膨らませていたのである。
ちなみに筆者らはおでんも注文した。こちらも継ぎ足しながら使っているのだろう濃いめの汁が具に染み込んでとてもおいしかった。
高梁のソウルフード、味屋のラーメン。
おでんと一緒に、一度食してみてはばららいか。
【味屋 地図】