高梁市には飲食店がない、という意見を耳にすることが割によくある。真実そうか。筆者はいまこの場に於いて、敢えて通説への反論を試みる。なぜか。筆者の楽しみといえば毎週日曜朝のテレビと、後は食う寝るくらいのものであるから在住する市に飲食店がないとなるとこれすなわち由々しき事態であり、しからば筆者自らの手で眼前に展望する暗雲を切り裂かんと挑みかかる次第である。
鉄の決意を胸に筆者が目を付けたのは高梁市備中町に店を構える「Vicchu Nut」(ビッチュナッツ)さんである。これほど「ぬちぬち!第一回高梁グルメリポート」に相応の店もあるまい。ご主人には以前料理教室の講師を依頼した経緯がありその腕の確かなことは我が身でもって実証済みである。というか筆者ごときが「腕の確かなこと~」とか書くことが既に恐れ多く非常に恐縮する次第。平身低頭。
で国道を左折し車を停めて、意気揚々と敷地に踏み込む。おしゃれな外観である。寒風吹きすさぶ冬のこととて店内にての食事であるが暖かくなれば太陽の下食事を楽しむのもこれまた至上であるに相違ない。もちろん中は中でおしゃれである。
それで肝心のメニューであるが、今回筆者らは2,000円のコースを予約した。
あっ。
書き忘れていたが2016年2月2日現在、お店は完全予約制である。うっかり予約をしないで訪れたとしてお店が開いていなかったとき、筆者は責任を取りかねるので読者諸氏に於かれては注意して頂きたい。
さて饗された料理は以下の通り。
ううむ。筆者はこのメニューを目にして感心することしきり、実に感嘆の唸りを禁じがたかったのである。炙り番茶といえば高梁市松原で生産、いままさに乗りに乗りつつある新名物であるしそして「アーリオ・オーリオ・ベニダルマ」。この語感。
「ベニダルマ」とは吹屋で作られている昨今話題のゆず唐辛子「紅だるま」のことを指すのであろうことに疑いの余地はなく、イタリアンにゆず胡椒を使用するという発想もさることながら、実にこれ、見事に高梁市産の食材が使用されているではないか。
ちなみに「アーリオ・オーリオ・ペペロンチーノ」とは日本でよく知られる「ペペロンチーノ」のこと。よって「アーリオ・オーリオ・ベニダルマ」なら紅だるまを使用したペペロンチーノといった趣か。
見よ。この青菜の瑞々しさを、パスタと絡み合う紅だるまの赤を。そして想像せよ、これら色とりどりの供宴がもたらす至福の口内空間を。
しからば筆者の口をもってして称賛の言葉は滝のごとく溢れ出し、湧き出る感動の渦は筆者の胸に強力なる竜巻をすら生み出したのである。
いささか文学的に過ぎた。だがその美味なこと、「高梁市には飲食店がない」通説はどこに消えた。机から椅子の下からくまなく探してもその痕跡すらいまの筆者には見つけがたいのである。
はや紙幅も尽きた。各料理の感想についてくだくだしく書くことは敢えてしまい。読者諸氏に於かれては自らの身で、この感動を味わって頂きたいと筆者は強く願うのみである。
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