かつて、日本最大のベンガラ生産地で日本の紅を支えた町と言われていた岡山県高梁市「吹屋」
標高500mに残されたベンガラ色の町並みがかつての栄光を感じさせる。
しかし、現在はベンガラ産業は廃業となり、吹屋のベンガラはかつて生産されていたものと工業的に生産されたものが販売されている。
年間10万人以上の観光客が訪れる過疎の町に「新しい紅を開発するため」全国にある紅を探す旅が始まった。
訪れたのは京都府宮津市にある明治26年創業の「飯尾醸造」
実は私が通っていた高校のすぐ近くにあったお酢屋で、自転車の通学路にあったため、当時の印象は「すっげー酸っぱい臭いがして、朝からキツイなぁ~」ぐらい。
あれから、約10年後、再び訪れたお酢屋さんの印象は180℃違ったものだった。
飯尾醸造といえば、富士山のパッケージが印象的な「富士酢」が有名だが、今回は紅を探す旅と言うことで、お目当てはコチラの・・・
グラスに注がれた真紅の液体の正体は「紅芋酢」。 まぁなんて美しい紅色!
京都の焼肉屋「いちなん」で出会ったその飲み物に、目を奪われ、その爽やかな味に心を奪われてしまい、導かれるように今回の旅は始まった。
紅芋酢を高梁の皆に飲んでもらいたい!そんな想いで、高梁から車で3時間半、京都府宮津市に向かったのであった。
案内してくれたのは、五代目の飯尾彰浩さん。
飯尾醸造の創業は明治26年で、122年間ずっとお酢を造りつづけている。
従業員22名の工場は営業職を設けず、昔からの取引先を大事にしながら、少しづつ生産量を増やしている。
高い酸度のお酢を仕入れてきて、水でうすめて大量生産し販売しているメーカーも多い中、コチラでは原料と製造に時間をかけてこだわり抜いたお酢を製造している。
簡単にお酢の作り方を言うと、まずは原料を発酵させてお酒をつくる。
それを搾って液体だけにしたお酒をタンクに入れて、その表面に酢酸菌の膜を浮かべると、
空気とふれあってる部分のアルコールを酢酸に変えてくれ、その後味を整えてお酢が出来上がる。
この大きなタンクの中では菌とお酒が交わっているのである。
これが本当にお酢なのかというくらい、紅く美しい!
原料はムラサキマサリという芋で、皮ごと使用しているとのこと。アントシアニンたっぷりで、紅芋酢を飲むと
コレステロールを下げ、健康で美しくなると話題沸騰中なんだとか。味もとても美味しい!
紅芋酢は40℃の温度調整を行い、150日くらいかけて醗酵させ、その後一年間寝かせる。
飯尾醸造のこだわりは、お酢の作り方だけではなく、原材料にもこだわっており、契約農家の無農薬・地域生産を優先している。
もちろん、富士酢の主原料のお米にもこだわっており
農薬散布が一般的であった昭和30年代から、地域の信頼できる農家さんたちと棚田で無農薬栽培を行ってきた。
今でも原料のお米は100%地元産で無農薬栽培を行っている。しかし、当時の農家も高齢化が進んでおり、社員自ら田植えを行ったり、
無農薬栽培の負担を軽減するために紙マルチ栽培を導入したりと棚田の景観保全と安心・安全の米作りに取り組んでいる。
焼肉屋で出会った紅色の飲み物を辿って行くと、材料・製法のこだわりと農家さんの情熱で作り続けているお酢に出会った。申し込みをすれば、工場見学も可能なので一度こだわりのお酢づくりを見てはいかがでしょうか。美味しさが倍になること間違いない。
飯尾醸造のこだわりはHPでさらに詳しく見ることが出来ます。
https://www.iio-jozo.co.jp/ 飯尾醸造HP
また、最新情報はこちらのブログで
http://iio-jozo.livedoor.biz/ 酢をつくるといふ仕事
今回の旅で手に入れた「紅芋酢」は8月15・16日に開催される備中高梁松山踊りに合わせて駅前に登場する
「紅色カフェ」で提供予定で、現在レシピ開発中です。お楽しみに!!