高梁市出身の有名な文豪がいるらしいと噂を聞いた。本当ならすごい。
でも文豪?そんな人がいたなんて聞いたことないけど?地元では知られているのかもしれないけどさーッ、ただそれだけで実は文壇ではそんなに有名じゃあないんじゃねーの?とも疑われる。
さっそく心当たりのある人に名前を聞いてみると
「ああ。石川達三ね。父親の仕事の関係で一時期高梁にいたんだよ」とのこと(生まれは秋田県らしい)。
石川達三~~?誰。
やっぱり全然有名じゃねーじゃん。誰だよ。石川達三って。ねえ。石川達三。
えっ。
石川達三?「生きてゐる兵隊」の石川達三?近現代文学史で火野葦平とセットでさも当たり前のように名前が出てくる石川達三?
すごい。
めちゃくちゃビッグネームではないか。上にも書いた通り「麦と兵隊」の火野葦平とごっちゃになる危険性を孕みながらも近現代文学史上に燦然と名を輝かせている大家である。
地元の人も知っているのだろうか?もしかしたら筆者のように知らない人もいるかもしれない。これはもったいない。
■石川達三文庫
で、高梁市内の中央図書館には「石川達三文庫」コーナーなるものまで設営されているらしい。これは見にいかなければなるまい。
ということで中央図書館に行くと、確かにあった。「石川達三文庫」コーナー。ここには石川達三本人の作品も陳列されているが、それだけでなく、縁があった作家の作品やら、普通に同時代(もちろん、細かく分類したら活躍した年代はばらばらだけど)作家の全集なども並んでいる。
例しに一冊手に取ってみると茶色く日焼けした(相当年代物もある)紙面から古書独特の匂いがする。古い。すごい。
■石川達三の作品
石川達三、恥ずかしながら筆者もまだ読んだことがないので調べてみると、これも当然だけど「生きてゐる兵隊」以外にもたくさん作品を残している。
「神坂四郎の犯罪」「悪の愉しさ」「悪女の手記」などなど。なんだか不穏だ。
近代の作家は現代作家ほど純文学とそれ以外とで畑が分かれていないものだけれども、石川達三も探偵小説みたいなものに関心があったのだろうか。確か火野葦平は「新靑年」の探偵小説全集に半分プロレタリア文学みたいな作品が掲載されていたような記憶がある。
こうなってくると気になるのは岡山県出身の作家って他にはどんな人がいるのだろうということ。ちょっと調べてみるとやっぱりたくさんいる。
■岡山県出身の作家
・正宗白鳥
・内田百間
・木山捷平
・柴田錬三郎
・吉行淳之介
・小川洋子
・重松清
・岩井志麻子
・山尾悠子
・あさのあつこ
などなどなど。とにかく多い。
まあ岩井志麻子なんかはデビュー作のタイトルがタイトルだし岡山出身なのは有名だけど、他にもそうそうたる顔触れ。
特に筆者が今回初めて知って驚いたのが「ラピスラズリ」他が国内幻想小説の金字塔として名高い山尾悠子。
調べれば調べるほど面白いが本題から逸れるので閑話休題。
受験文学史だけでは分からない石川達三の魅力が凝縮されているので、多くの人に高梁中央図書館「石川達三文庫」コーナーまで足を運んでもらいたい。
【高梁市立図書館ホームページ】
http://www2.city.takahashi.okayama.jp/toshokan/chuou.html
【高梁中央図書館 地図】