グルメ王国、日本。寿司・ステーキ・ケーキ・松茸、美味しい食べものを挙げるとキリがない。
もし、その美味しい食べ物に陶酔し、この食べ物を自分で作りたい・仕事として生きたいと思ってしまったら・・・。
町のケーキ屋さんや寿司職人の始まりは美味しいという素直な気持ちからだったのかもしれない。
高梁にもピオーネの美味しさに驚き、トラック乗りからピオーネ農家を目指した男がいる。高梁市備中町でピオーネ栽培に取り組む豪傑、赤迫さんだ。
倉敷から移住して3年目になる赤迫さん。
移住前は長距離トラックの運転手をしていて東京と福島への定期便を毎週運搬していた。
眠気覚ましも兼ねて、長距離移動中はlecca(日本の女性レゲエ歌手)の歌を聴いて元気をもらっていた。
そんな赤迫さんは人からもらって食べたピオーネの美味しさに驚き、作った人に憧れを抱いていた。
一昨年、高梁市備中町でピオーネ栽培に携われる機会があることを知り、即飛びついて転職。備中町へ移住した。
転職後は研修を通して勉強をしていたが、もっと勉強したいという想いが強くなり、独立を決意。
ブドウ農家を自力で回って勉強し、出荷する所まで経験を積むことができた。
昨年の4月に2反の農地を借りることができ、苗を植えて自分のブドウ栽培をスタートした。
今年はさらにブドウ畑を2反借りることができ、1反はそのまま活用し、もう1反には新たに苗を植えている。
「企業で勤めながら農業するより専業でやる方がすごい楽しい。美味しい物を自分で作るのはたまらん。」と農家の魅力を教えてくれた。
憧れていた仕事をスタートし、本気で楽しんでいる姿に感動を覚えた。
しかし、ブドウは植えてすぐ収穫できる作物ではなく、最初の収穫までに4〜5年もかかる。
収穫できるのはもう少し先であり、今は様々なバイトをしながら生活している。
そのため奥さんと2人の子供さんは倉敷に残り、奥さんも仕事して収入を得ながら赤迫さんは単身で勉強している。
まだ完全に専業になっている状態ではないが、早く軌道に乗せて農家一本にしたいと目標を立てている。
「農家生活はしんどいことも大変なことも多い。
体力面の不安や家族がいれば収入や生活面の悩み事もでてくる。
美味しい物を作りたい!という信念がないと続けていけない。
信念と情熱を忘れんようにせんといかん。」
と語る赤迫さん。
甘いピオーネを作るためには甘い気持ちでなく、信念と覚悟を持って向き合うことが大切だ。
赤迫さんはトライアスロン選手でもあり、何度もレースに出ている。
出場すればするほど長いレースに出たいと思うようになり、4年前に佐渡島で開催されている日本で最長のレースに出場した。
なんと、スイムコース4km、バイクコース190km、ランコース42.2kmもあるという。
赤迫さんはこのコースを14時間半かけて完走した。
その経験から、「なんでもできるという自信を持てるようになった」と語る。
美味しいピオーネに出会って、移住を決意した赤迫さん。その表情に迷いや躊躇いはない。ただ、「美味しいものを作りたい。」そんな情熱が取材を通して伝わってきた。
赤迫さんが作った情熱のピオーネを食べた人が「ピオーネを作りたい」と移住してくるのも、そう遠くない話かもしれない。