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第16回 納涼祭 唐揚げの謎

何だか最近忙しい気がするのは加齢による体力の衰えだとか肥大化した自我が周囲に認められたがるので精一杯働いている振りをしているとかそういう理由ばかりではない。絶対的に忙しさの度合いが増している。そうしてそれは筆者個人に限った話ではない。
夏の高梁はイベントが目白押しで、みんな自分が運営側なら準備や当日の進行で、運営側でないなら遊びに行くのに必死で目の回るように忙しく、もうとにかく高梁のこのひと月というものは、給料日直後の、紛糾した金曜日の大衆居酒屋みたいなものなのである。

 

絶賛準備中です

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だから筆者も最近はいろいろのお手伝いをしたり遊びに行ったりお手伝いに行くつもりだったのに結果的に遊びに行ったのとほぼ同義になったり、とにかく週に二度は失神するくらいてんやわんやである。

故に筆者はたまに自分がどこで何をしているのか分からなくなる。というより忘れるようなことがある。先日は気が付くと屋外で唐揚げを揚げていた。随分良い匂いがする。それで隣を見ると珈琲屋さんである。反対の隣にはピオーネやマスカットのジュース。離れた所では焼きそば、焼き鳥、クレープなんかも売っている。めだかすくいもある。

 

いつからここにいたのか

いつからここでこうしていたのか

 

頭上でずどん、と大きな音がした。見上げると花火である。きれいなものだ。花火を見るときには作法、というか所作みたいなのがあり、打ち上がった花火に向かって声を張り上げなければならない。「ウェザァァァーーー」「リポォォォォーーーッ」

 

ワナビー花火

ワナビー花火

 

そうだ。今日は宇治町の納涼祭なのであった。お盆の時期に合わせて帰省してきた人も引っくるめ、宇治町全体で盛り上がっちゃおうという、非常に賑やかかつ健全なお祭りである。

 

夜の会場はこんな感じ

夜の会場はこんな感じ

 

人が増えてきた。手は震えてきた。

人が増えてきた。手は震えてきた。

 

筆者は唐揚げを揚げていた。諸般の事情で販売は一人で行っている。友達がいないからではない。

 

唐揚げの横にはやさしい心配り

唐揚げの横にはやさしい心配り

 

途中、雨がざあざあ始まったので皆てんでに「雨だ雨だ」「テントの下もぐれ」などと言って筆者が唐揚げしているテントにも入ってくる。そうすると祭りは中断されるから、筆者は避難してきた小学生をからかう。からかうといっても難しいのは、何せこちらが取り扱っているのは煮立った油。ひっくり返しでもしたらただ事では済まされぬ。まして雨も降っているから、水滴の一つでも落ちてくれば油が跳ねて危険なことこの上ない。慎重な対応が要求される。火は消した。小学生をからかうのにも万が一にも事故の起こらぬように神経を張り詰めなければならないのである。

 

ちなみに昼の会場。 この机が人で埋まる

ちなみに昼の会場。
夜はテーブルが埋まるくらい人が来た・

 

雨は一度止んだものの祭りが再開されてしばらくするとまた降り出した。筆者は小学生をからかいながら不安であったのは花火のことである。
宇治納涼祭ではメッセージ花火を上げる。希望者に費用を負担してもらう代わりに、打ち上げ時に希望者随意のメッセージを読んで紹介するである。その他、いわゆる普通の花火も上げるが、これも連発に次ぐ連発で派手なのだ。見ていて気味が良い。自然と「ウェザァァァーーー」「リポォォォォーーーッ」の張り上げ方も大きくなる。

 

すげえ!爆発しているみたいだ!

すげえ!爆発しているみたいだ!

 

あっ消えちゃった

あっ消えちゃった

 

で、とにかく誰からも頼まれていないのに勝手に冷や汗をかいていたのであるが、二度目の雨も直に止み、結果的に花火は無事上がった。赤、青、緑の色が点々と空で明滅を繰り返す様に町民一同、感嘆の息を漏らしたのである。

 

すげえ!また爆発してるみたいだ

すげえ!また爆発してるみたいだ

 

それと忘れていけないのはお楽しみ抽選会である。受付所で記名した来場者のうち、運の良い誰かに抽選で様々の賞品が当たるのだ。筆者も無論申し込んだ。いろいろの賞品があるが筆者が注目しているのはワンダーコア。なんだかよく分からぬが乗って倒れ込むだけで腹筋の鍛えられる夢のマシーンなのである。

結果的に筆者にワンダーコアは当たらなかった。その他の賞品も当たらなかったようである。ようである、というのは、何だか一向に賞品の当たる気配のない筆者は自分の悲運に絶望し、ただただ夢中で唐揚げを揚げていたからなのであった。

 

辛いこと哀しいこと、たくさんあるけど、気分アゲていこうよ。唐揚げ揚げながら

辛いこと哀しいこと、たくさんあるけど、気分アゲていこうよ。唐揚げ揚げながら