田舎は不便で、買い物をするところもない! 買い物弱者という言葉が生まれるほど、地域の買い物事情は問題となっている。 高齢化・過疎化が進んでいる地域に新しいスーパーが来るわけでもなく、地元商店がなんとか営業を続けている。地域の人にとって、地元の商店は無くてはならない存在だが、後継者がいなかったり、採算が合わないことが理由で閉店する店も増えている。こうして買い物がしたくても出来ない人、不便と感じる人が全国で600万人もいる。
そんな人達の要求を満たすスーパースターもとい、スーパーカーが「移動販売車」なのである。 昔からあるCOOP(生協)や鮮魚の販売、最近ではイオンなどが移動販売に参入してきており、何かと話題の移動販売業。 移動販売車が生活になくてはならない存在となっている地域も多い。 道路を走っていると、おばあちゃん達が集まっている場所がある。そこは高確率で移動販売車の販売場所になっていて、10分くらいするとトラックがやってくる。
今回は、吉備中央町で移動販売で活躍する成田賢一さんの 6月18日に高梁市で開催された講演会でのお話を紹介します。
成田さんは吉備中央町でカフェ「ベルネーゼ」と「いどうスーパーロンドン」を経営している。
移動販売は2013年にスタートし、現在は地域の需要に応える形で、移動販売車両2台目を購入するなど規模を拡大している。 2005年にオープンしたカフェ「ベルネーゼ」は閑静な住宅街の中にひっそりと佇んでいる。はじめは誰もが「こんな所で商売しても失敗する」と心配したが、 ひとりひとりを大切にする接客とマスコミに取り上げてもらう話題性もあり、現在では多い時に200人も来店する人気店となった。
■カフェからドイツへ
2005年にオープンしたカフェの経営も軌道に乗ってきた頃、ふと立ち止まって「このままでいいのか?」と考えるようになった。 2011年東日本大震災を見て、自分に何が出来るのかをもう一度考えるためにドイツに修行に出ることに。 ドイツでは日本料理店「満月」で修行を行い、料理の基本、お弁当・惣菜の製造や移動販売を学んだ。 移動販売では、連日100件以上の個人宅を巡回し移動販売、無謀な注文やスケジュールを乗り越えた経験は、現在の移動販売に生かされている。
■移動販売を始めたきっかけ
「なぜ、移動スーパーを始めたのか?」 その答えは2011年ドイツ修業に遡ります。仕事内容は、午前中は市内の日系企業へのお弁当製造・配達。午後からは、市内や郊外に住むドイツ人・日本人宅へ移動販売をしていました。毎日100軒を超える個人宅を巡回し、アウトバーンを走っていました。2012年に帰国後、お弁当の製造、配達を開始。
このお弁当配達を通じて出会った、ある年配の女性とのふれあいが移動スーパー開始へのきっかけとなりました。 人里離れた山奥で生活するその80代のお客様は、お弁当を配達するたびに、「まぁ、これでも食べねぇ。」とフルーツゼリーや飴をプレゼントしてくれました。そして15分ほどお話をし、「ではまた来ますね。いつもありがとうございます。元気でいてくださいね。」と告げ、握手をすると、毎回その手を離さなかったのです。握手をしながら目を閉じ、「私はこうやって話が出来るのが本当に嬉しいんよ。」と、本当に嬉しそうに言ってくれました。
たった15分のために毎回化粧をしてくれていたり、お見送りの際には、足腰が不自由にも関わらず、毎回杖をついて玄関先まで出て手を振ってくださっていました。 この時、「ご年配の方の生活では、こうして人と会うことがとても嬉しいのではないか。このように喜んでいただけることにより、さらに健康的になり、生活の中に+αのしあわせを感じていただけるのではないか?」と感じ、自分の経験の中で何が出来るのかと考えた時に、ドイツで経験していた移動スーパーを始めようと決断しました。
カフェで出しているコーヒーも400円、30分かけて届けるお弁当も400円。 同じ400円の商品でもこの感動はコーヒーでは生まれない。 お金以上の価値をこのおばあちゃんは感じてくれた。 「おばあちゃんの様に日本中に必要としてくれる人がたくさんいるのでは・・・」 そんな小さな気付きと感動から移動販売が始まった。
■ひとりひとりを大切にしたサービス
2013年11月 町・商工会・問屋さんなど色々な人の協力を得て、 1日で回る巡回ルートを作成し、食品を卸してくれる問屋さんとも契約。いよいよ移動スーパーがスタート。
最初はは公民館などの集会所を回るスタイルをとっていた。 しかし、多くの人達の支えで始めたので、キチンとした接客サービスをしないと考え、手間と時間のかかるお宅訪問型に切り替えた。
手間と時間はかかったが売上は倍に上がった。玄関前まで来てくれるサービスが住民の心を掴んだ。
現在ロンドン号は一日の走行距離は60~70km。朝9時から18時まで、毎週決まったルートを巡回している。 吉備中央町役場と緊密に連絡を取り合い、訪問型介護予防事業(お弁当の配達)の委託契約事業所として、高齢者への見守り活動も行っているなど 地域にとって無くてはならない存在となっている。
■今後の展開は
いどうスーパーロンドンの夢は、この社会から「買い物弱者」という言葉が消えることです。
つまり、皆が買い物に困らない社会になること。その夢の実現のために、皆さまひとりひとりとの時間を大切に、今日もおなじみの音楽と共に、あなたのもとへと向かっている。
http://blog.livedoor.jp/bernese1/ ベルネーゼさんのブログ
http://k-franklin.com/london/ いどうスーパーロンドン