七月の初頭、我が郷里、といってもノスタルジアはあまり沸いてはこないのだけれど、東京に帰ることになった。友人の結婚式なのである。すごい楽しみ。
筆者は、特にここ二~三年は余儀ない事情により定期的にブルーレイ・ソフトを購入せざるを得ないこともあり、だいたいいつも現金の持ち合わせがない。そこにきてこの帰郷である。交通費。ご祝儀。二次会代。
嗚呼。結婚式には行きたいけれど、吹けば飛ぶよな筆者の財布はコーナー際でぼこぼこに殴られているボクサーのように荒野で爆発寸前の大ピンチである。

 

部屋に机置きました。

部屋に机置きました。

 

でも結婚式に行けばフォアグラが食べられる。筆者はフォアグラが大好きなのだ。
肉といえば上記の通り金欠に喘ぐ筆者は鳥のむね肉ばかり買う。むね肉も美味しいしレパートリーもだいぶ増えたのだけれど、心の中にはどうにも釈然としない部分もある。たまには毎週水曜日に1枚あたり98円で特売されていない肉も食べてみたいものだなあ、と白昼に夢を見ていると、親切なお人が「肉貰えるイベントあるよ」と教えてくれた。
バカラ。そんな上手い話がある訳がない。どうせ豪華な旅館で豪勢な肉料理を食べていたはずなんだけど、気付いたら森の中で泥団子をほおばっていた、そうですここらじゃ悪戯者の狐が旅人を騙すのですみたいな話に相違ない。

筆者の正義の血が疼いた。こうなれば潜入捜査だ。必ず奴らの悪巧みを白日の下にさらしてみせる。決して肉に釣られた訳ではない。

(ワーニング)
ここから先の記事には「首スパーッ」「血ブシャーッ」「深ヅメーッ」みたいな表現が為される箇所があるかもしれませんので、お子様、心臓の弱い方の閲覧には充分ご注意下さい。
※嘘です。

 

Kさんが差し入れしてくれた漬け物。これもおいしい。

Kさんが差し入れしてくれた漬け物。これもおいしい。

 

で、会場であるKさん(「こゝろ」ではない)宅に向かったものの、そこには狐の影も形もありはしない。代わりにバァァァーーーン、と横たわっていたのはバスドラムのように太ったイノシシである。

 

Kさん宅のわんちゃん。お嬢さんではない。

Kさん宅のわんちゃん。お嬢さんではない。

その体重なんと約90キログラム。これがどれほどの重量かというと、高校時代、野球部に所属していた筆者がベンチプレスで90キロのバーベルを上げようとしたら、5秒くらいねばってへなへな落ちていってしまうというくらいの重さである。

筆者が参加したイベントは「イノシシさん解体会」であったのだ。

 

これがうわさの解体場所。イノシシは吊り下げて解体します。

これが解体場所である。イノシシは吊り下げて解体する。

 

切っています。

切っています。

イノシシは高梁市内の至る所に生息していて、さすがにJR伯備線の車内で吊革に掴まっているのが散見されたりはしないものの、山間部では割とよく見る野生動物である。
見てる分にはまあまあかわいいのだけど、こいつが作物を食い荒らしたり夜に道路に出てきて交通事故を起こしたりと、まあそれなりに問題を起こしている真性困ったちゃんなのである。

 

S隊員からピザの差し入れもありましたが、写真撮り忘れてしまいました。

S隊員からピザの差し入れもありましたが、写真撮り忘れてしまいました。

ではイノシシは皆の嫌われ者のラクカラチャかというとそうでもなく、これが捕らえてさばいて食べると美味。害獣を減らせて食糧にもなって、イノシシ狩りは文字通り一度で二度美味しいのだ。
今回は、筆者も毛皮のはぎ取り、肉の切り離しに挑戦させてもらったもののなかなか難しい。素人が一朝一夕でできるものではない。ちなみに慣れた人なら一頭二時間程度で作業を終えることもできるらしい。まさに高梁チェーンソーである。
で、他の慣れた人が鮮やかな手つきで解体してくれて、筆者はヒレ肉とあばら周りの肉をもらった。

 

あばら。大きい。

あばら。大きい。

大鍋にぶちこみました。美味しい出汁がでます。

大鍋にぶちこみました。

 

筆者が特筆したいのはヒレ肉である。よく、テレビなんかでグルメリポーターの人が高級そうな肉を頬張って「脂が甘ーい」とか訳の分からないことを言っていて「脂が甘い訳ないだろっ。このいんちき野郎がっ」と冷凍保存したのち解凍した鳥むね肉を噛みしめながら思っていたのだけれど、このイノシシの脂は実際甘い。
正直に書けば赤身だけではいささか淡泊に過ぎるきらいがないではないが、脂身と一緒に噛みしめると旨味の凝縮されたエキスがじゅわじゅわ脂の中からしみ出して、舌に甘みを感覚させるほどに濃厚なのだ。

ヒレ肉。台所はあまりきれいじゃないけど肉は美味しい。

ヒレ肉。台所はあまりきれいじゃないけど肉は美味しい。

 

これはぜひ多くの人に食べてみてほしいと筆者は強く思う。生活に根差しているという意味では高梁市民にとってこれ以上に親しみの深い食材もなかなかあるまい。
君の心でキャッチ・ザ・狩猟免許!